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スライド作成は夜残業してやるべきでない理由|スライドデザイン研究所

 
良い仕事をするには、十分な睡眠をとることが必要不可欠である。
 
とはいえ日本ではまだまだ長時間労働がはびこっている。長時間労働になると睡眠時間が削られる。しかし睡眠不足だと脳機能が極端に低下する (*1)。脳機能が低下した状態では仕事の生産性は下がる。そこでアウトプットを維持するためには長時間労働にならざるを得なくなる。

この負のスパイラルから抜け出す方法は、効率的に仕事をすることである。

 

体内時計にしたがって時間を使う


人間の身体には体内時計があり、睡眠・覚醒といった生理現象が約24時間周期で変動する(概日リズム)。この概日リズムにしたがって時間を使い分けることによって、より効率よく仕事ができる。

 
人体には1日に2回、午前中と夕方に生産性のピークがある。一方、午後12時~16時は生産性が低い。
 

朝は物事への意欲が向上するドーパミンや、脳機能を覚醒させるアドレナリン分泌量が増える。そして1日のうち最も脳が活性化するのは、目覚めから2時間後である。そこから1~2時間が作業効率が最も良い。そのため午前中は企画書や提案書のアイデアを考えるなど、論理的な思考が必要な仕事をするのに適している

午後

午後12時~16時は気が散りやすいため (*2)、メールの返信、データ整理などといった重要度が高くない仕事のほか、打ち合わせなど複数人で取り組む仕事に適している。

夕方

夕方は朝ほどではないが、仕事がはかどる時間帯である。ただし朝に比べて疲れているため、論理的思考が必要な仕事は向かない。疲れや倦怠感が開放的な思考を誘発するため、クリエイティブな発想が必要な仕事が向いている (*3)。

情報が脳に定着するのは、しっかりとした睡眠をとった後であることから、新しい情報やスキルを学ぶのには夜が適している。仕事をするよりかは自学自習にあてたい時間である。とはいえ、夜はマイナス思考になりがちでもあるため、早めに切り上げるのがよさそうである。

深夜

深夜は脳機能が低下しており、テンションが高くなり平常心を失いやすい。深夜に書いた文章を翌朝読み返して赤面した経験を持つ人も結構多いと思う。深夜の仕事は非生産的であることから避けた方がよい。

もしその日のうちに仕事が終えられなそうならば、キリの悪いところで切り上げるのがよい。そうすると翌朝、アイドリング状態から仕事を始められる。あともう少しだから、と夜に残業してしまう習慣は変えた方がいい。

 
ここまで読んできて、自分は夜型人間で夜に仕事が捗るという人もいるかもしれない。しかしフレックスタイム制で働いているならまだしも、一般的な朝9時始業のサイクルで働く場合、夜まで働くとなると結局は長時間労働、睡眠不足に陥ってしまう。それを避けるためにも、残業して夜遅くまで働くのは避けたい。

 

仕事の生産性を高めるためには


限られた就業時間で仕事の生産性を高めるためにできることは、他にもいろいろある。ここでは5つを紹介する。


優先順位を設定する

仕事に優先順位をつけて、ToDoリストを作成する。未達成のタスクには気を取られがちになるが(ツァイガルニク効果)、ToDoリストに具体的に計画を書き込むことで不安から解放され、次のタスクをスムーズに行うことができる (*4)。

【ツァイガルニク効果】
人間は達成できなかった物事や、中断・停滞している物事に対して、より強い記憶や印象を持つ


重要なことは朝にやる

上で述べたように、朝は論理的思考が必要な仕事に適した時間帯である。また同じことをするにしても、午後よりも朝の方が生産性が高い (*5)。

シングルタスクに絞る

人間の脳は基本的にひとつのことにしか集中できない。マルチタスクを効率的にできる人は全体の2.5%の人だけである (*6)。

中断しない

仕事を中断すると、元の状態に戻るまで約23分かかる (*7)。集中したいときにはメールやSNSの通知をオフにするなど、メインの仕事に集中できる環境を整える。

適度に休みを入れる

人間が1日に集中できるのは合計4時間ほどである。そして大人の集中力が持続する時間は平均45分、最大でも90分である。集中力が切れる前に、適度に休みを入れたい。特にちょっと体を動かすことは認知能力の回復に効果的である (*8)。


スライド資料作りはいつやるべきか


前回の記事で書いたが、スライド資料を作る際の手順は、ストーリーラインを作成、情報収集、絵描き、パワポで作業とするのがよい。

この手順に従えば、論理的思考をするのに適した朝にスライドの一番の肝であるストーリーを組み立て、午後に情報を収集し、夕方に絵描きやパワポのデザインを整える作業が適している。
 
スライド資料のストーリーはできていて、あとはパワポの作成だけという段階ならば、Timewitchにスライド作成をまかせて寝る。そして翌朝、図解化されたスライドを受け取り、スライドの論理性 (構造、言葉など)を最終チェックする、というのも一つの手である。

 参考文献

1. Lim J, Tan JC, Parimal S, Dinges DF, Chee MWL (2010) Sleep Deprivation Impairs Object-Selective Attention: A View from the Ventral Visual Cortex. PLOS ONE 5(2): e9087

2. Matchock RL, Mordkoff JT (2009) Chronotype and time-of-day influences on the alerting, orienting, and executive components of attention. Exp Brain Res. 192(2):189-98

3. Mareike B. Wieth & Rose T. Zacks (2011) Time of day effects on problem solving: When the non-optimal is optimal, Thinking & Reasoning, 17:4, 387-401

4. Masicampo EJ, & Baumeister RF (2011) Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), 667–683

5. Pope NG (2016) How the Time of Day Affects Productivity: Evidence from School Schedules. The Review of Economics and Statistics 98 (1): 1–11

6. Watson JM, Strayer DL (2010) Supertaskers: Profiles in extraordinary multitasking ability. Psychonomic Bulletin & Review 17, 479–485

7. Mark G, Gudith D, Klocke U (2008) The cost of interrupted work: more speed and stress, Proceedings of the 2008 Conference on Human Factors in Computing Systems, Florence, Italy, April 5-10

8. Hogan CL, Mata J, Carstensen LL (2013) Exercise holds immediate benefits for affect and cognition in younger and older adults. Psychol Aging. 28(2):587-94

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