スライドにおける最適な文字サイズには訳がある|スライドデザイン研究所
新聞を読むとき、まず最初に全体をスキャンしながら、大きく書かれた記事タイトルを探す。そしてタイトルを読んでから、その下に小さい文字で書かれている内容を読むかどうか判断しないだろうか。
スライドでも同様のことがいえる。読み手は自分が知りたい情報を探すため、最初にスライド全体をスキャンしていることが多い。そこで、今回のテーマであるスライドの文字サイズを調節することで、視認性や可読性を高くすることができる。
ではスライドにおいて、どの大きさの文字サイズが最適なのだろうか。
まず適切な文字サイズを考える前に、スライドサイズを決めなければいけない。文字サイズは絶対的な値であり、スライドサイズが変わると、スライドに対する文字サイズの比率が変わってしまうからである。
昨今のグローバルスタンダードとして、PowerPointデフォルトの16:9 (33.867x19.05cm) のスライドサイズが多く使われている。
今回は、このスライドサイズにおける最適文字サイズについて話していく。
なぜ文字サイズを変えるのか?
情報には優先度がある。通常、まず大まかな内容から入り、徐々に詳細に移っていく。いきなり細かい点から話しても、人に理解されないからである。
スライドでも同様で、タイトルのような優先度の大きいものから、内容の詳細へと話が移るべきである。
さて私たちが文章を読むとき、目は左から右へと小刻みにジャンプしており、視線は次々に隣の単語を探索している。この1秒に3回もの高速な眼球運動をサッケードという。
イタリアトレント大学の認知心理学を専門とするMichele Scaltritti博士が、2019年にNatureのScientific Reports誌で発表した論文によると、文字サイズが大きいと単に目をひくだけではなく、サッケードの振幅が大きくなり、読み取り速度が速くなる効果がある。
そこで効率的に読んでもらうためにも、文字サイズは大きい方からタイトル>見出し>本文として、はっきりと読む順番を提示するのがよい。
文字サイズによって内容を階層化しておくことで、読み手の視線を誘導し、知りたい情報へと早く導ける。
文字サイズは3種類まで
文字サイズは1スライドで3種類程度に抑えるのがよいとされている。文字サイズの種類が多いと、情報の階層関係が不明確になるためである。
本文の文字サイズに対する、タイトルや見出しの文字サイズの比率をジャンプ率という。デザイン的にフォントサイズをジャンプ率1.3~2倍の間で変化させるのがよい。ジャンプ率が高いと躍動感のある元気な印象、ジャンプ率が低いと落ち着いた真面目な印象になる。
そしてスライド内でジャンプ率をおおよそ一定にすると、すっきり見やすい。
スライド利用シーンと文字サイズ
スライドに適切な文字サイズは、利用シーンによっても変わってくる。主な利用シーンは3種類が考えられる。
一般的なビジネスシーンのスライド
まずは一般的なビジネスシーン(a、b)におけるスライドの文字サイズについて考える。
ビジネスシーンで使う資料は、図解もあるが文字が比較的多く、中身の文字をよく読むスライドといえる(ディテールスライド)。
ディテールスライドでは、必要な情報をスライドに格納する必要がある上に、文字サイズが大きいと画面の圧迫感が大きくなる。そのため文字サイズを小さくするのだが、ではどれくらいのサイズが良いのだろうか。
Timewitchでは、タイトル24pt、本文中の見出し18pt、本文では14pt(~18pt) の文字サイズを主使用している。
先ほど述べたジャンプ率は、本文>見出し>タイトルでそれぞれ約1.3倍であり、比較的落ち着いた印象である。
講演などのプレゼンテーションスライド
次に、講演などのプレゼンテーションスライド(c)では、どれくらいの文字サイズがよいのだろうか。
こちらは文字が少なく、アイコンや写真、簡潔な図解などで直感的に理解されるスライドといえる(キースライド)。
プレゼンテーション会場の大きさにもよるが、キースライドの文字サイズはタイトルが32pt以上、本文は24pt以上が読んでもらえる目安になる。
Timewitchではタイトルに36pt、本文に28ptの文字サイズを使用している。
本文からタイトルのジャンプ率は、ディテールスライドと同じく約1.3倍である。
まとめ
今回は最適な文字サイズによって、読み手の視線を誘導する話であった。文字サイズの他にも、フォント・色・余白などを変えることで(タイポグラフィー*)、タイトルや見出し、重要な箇所に注目を集めることが可能である。
タイポグラフィーについてはWebデザインの分野で多く研究されており、スライドデザインの参考にすることができる。
ただし多用すると、逆にわかりにくいスライドになってしまうため、注意が必要である。
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