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覚えておきたい右揃えの利点と注意点|スライドデザイン研究所

スライドを用いたプレゼンテーションにおいて、文字の配置は読みやすさやデザイン性に大きな影響を与える。適切な文字配置は、情報を効果的に伝え、視覚的な魅力を高めるための重要な要素だ。PowerPointで選択可能な文字配置は5通り:

Timewitch標準フォーマットにおいて、ほとんどのテキストには左揃え中央揃えが用いられる。では、右揃えを用いるべきなのはどんな時だろうか?

本記事では、右揃えに焦点を当て、その特性の活かし方と使用時の注意点を掘り下げていきたい。

表やリストは右揃えの出番


右揃えの出番は確かに少ない (この設定が長文テキストに適さない理由については、前回記事左、右、中央? : ベストな文字配置はケースバイケースを参照されたい)。

しかし、右揃えの使用により読みやすさが大きく向上する時もある。それは、桁数の多い数字を縦に列挙する場合だ。

料金や数値データの一覧など、表やリストで数字を並べて見比べる必要がある場合は、右揃えにすることで視覚的に整ったデザインを実現できる。以下の通り、縦に配置された数字の各桁の位置が揃うからだ。

Schwen (2020)*のFig 8. (C)を参考に作成

但し、前回記事でもご紹介したSchwen (2020: 9)*が指摘する通り、以下のようなケースではせっかくの右揃えのメリットが損なわれてしまう。

 ・脚注や注釈の追加:数字に「*」上付き文字を追加すると、各桁の位置が上下の数字と揃わなくなる。これは大きな誤読に繋がる恐れもあるため、特定の数値に注釈等が必要な場合は工夫が求められる。例えば、下図右のように吹き出し等のオブジェクトを活用するのはいかがだろうか。

・プロポーショナル数字の使用:数字ごとに幅が異なる「プロポーショナル数字」が用いられたフォントも、桁数の多い数字の羅列には適さない。この点については、次のセクションをご覧いただきたい。

*Schwen, Lars Ole (2020): Ten simple rules for typographically appealing scientific texts. PLOS Computational Biology 16(12): e1008458. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1008458

プロポーショナル数字と等幅数字


PowerPoint上で用いられる数字フォントには、2つの種類がある。
各数字の幅が不揃いな「プロポーショナル数字(proportional figures)」と、全ての数字の幅が等しい「等幅数字(tabular figures)」だ。

参考記事
・「フォントの組版機能16『等幅数字とプロポーショナル数字(tnum/pnum)』」 (Type Project)
・「Proportional vs. Tabular Figures」 (MyFonts)

プロポーショナル数字の場合、各数字本来の形状がフォントデザインに反映されており、例えば「1」と「8」とでは横幅が大きく異なる。ウェブや書籍でよく用いられるGeorgiaフォントの数字は、このタイプに分類される。
 
一方、Timewitch標準フォーマットで用いられるTrebuchet MSの数字は、等幅だ。本来は幅が狭い形状の「1」も、その両端に設けられたわずかなスペースにより、他の数字と等しい幅になるようデザインされている。

上図のような表にプロポーショナル数字を用いると、「1」の横幅が狭い分、その左隣の数字がわずかに右寄りになる。これでは、セル内の数値を右揃えにしても、各桁の位置が揃わなくなってしまう。
 
読みやすい表やリストの作成においては、右揃え設定と等幅数字の併用が肝心だ。

まとめ


PowerPointの文字配置は、視覚的なデザイン性と情報の伝達効率を両立させるための鍵だ。右揃えは、左揃えよりは出番が圧倒的に少ないものの、料金や数値の列挙と比較には最適な設定だ。
 
桁数の多い数字を扱う際は、右揃えとTrebuchet MSのような等幅数字を組み合わせることで、整然として正確に読み取りやすいスライドを作成できる。
 
PowerPointで選択可能な文字配置にはそれぞれ固有のメリットとデメリットがあるが、目的に応じて適切に使い分けることで、可読性・デザイン性共に優れたスライドを実現できる。